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医療従事者のメンタルヘルス2026.09.06

看護師が自分の限界に気づけない理由|ナースステーションの隣で見ていたこと

私は以前、病院で医師事務作業補助者として働いていました。

医師の書類を代わりに作る仕事です。看護師ではありません。ただ、席がナースステーションのすぐそばにあったので、看護師さんたちの一日を、毎日横から見ていました。

見ていて思ったのは、この人たちは自分がどれだけ疲れているか、たぶん自分では分かっていないんだろうな、ということでした。

当事者ではない立場から書くので、違うと感じる部分もあると思います。それでも、隣で見ていたから気づいたことがあります。


## 1. 交代制勤務は、気持ちの持ちようでどうにかなるものではありません

日勤、準夜勤、深夜勤。この順番が、週の中で入れ替わります。

人の体は、朝に目が覚めて夜に眠くなるようにできています。この仕組みは、意志の力で切り替えられるものではありません。眠りにつく時間が毎週ずれるということは、体が「いま何時なのか」を見失い続けるということです。

よく眠れない、寝ても疲れが取れない、休みの日に何もできない。こうした状態は、体力がないからでも、根性がないからでもありません。勤務の形が体の仕組みと合っていないだけです。

ここを取り違えると、「自分が弱いからだ」という結論になってしまいます。


## 2. しんどさが「慣れるもの」として扱われています

新人のころは、みんな大変そうにしています。眠れない、覚えられない、間に合わない。

それに対して返ってくる言葉が、「最初はそんなもの」「そのうち慣れる」です。

この言葉自体は、励ましのつもりで言われています。実際、慣れる部分もあります。手順を覚えれば、動きは速くなります。

ただ、慣れないものもあります。人の生死に立ち会うこと。責任の重さ。時間に追われ続けること。これらは回数を重ねても軽くなりません。ただ、口に出さなくなるだけです。

口に出さなくなったことが、「慣れた」と受け取られていきます。


## 3. 亡くなった方のことを、話す時間がありません

受け持っていた患者さんが亡くなることがあります。

そのとき、看護師さんはご家族への対応をして、必要な処置をして、記録を書きます。そして次の患者さんのところへ行きます。

休憩室で少し話すことはあっても、腰を据えて悲しむ時間は、勤務の中に組み込まれていません。

心の整理には時間が要ります。その時間が確保されないまま次が来ると、整理されないものが積み重なっていきます。一つひとつは小さくても、何年も続けば量になります。

あとになって、理由の分からない気分の落ち込みや、涙が止まらない日として出てくることがあります。


## 4. 相談先が、上司しかありません

困ったときに相談する相手は、たいてい先輩か師長です。

この人たちは、評価をする立場でもあります。シフトを組み、配属を決め、来年の勤務先に影響を持ちます。

「最近きついです」と言うことが、「この人には任せられない」と受け取られるのではないか。そう考えると、言えなくなります。

相談することと、評価されることが、同じ人に向かっている。この構造がある限り、正直に話すのは難しいです。

院内に相談窓口があっても、同じ建物の中にある限り、この不安は消えません。


## 5. 辞めることが「逃げ」に見えてしまいます

看護師の資格は、取るのに時間もお金もかかります。実習も国家試験も、簡単ではありません。

だからこそ、辞めることの重さが変わってきます。

ここまでやってきたのに。せっかく取った資格なのに。同期はまだ続けているのに。

そうやって、自分の中の限界の線が、どんどん後ろに下がっていきます。

続けることが正しくて、離れることが間違い。そういう構図になってしまうと、本当に危ないところまで来ても、自分で止まれません。


## 限界は、自分では見えません

ここまで書いてきたことに共通しているのは、自分の状態を自分で測れなくなる、ということです。

疲れの基準が、いつのまにか職場の中の平均に合わせられていきます。周りもみんな疲れているから、自分もこれくらいは普通だ、と考えるようになります。

でも、その平均自体が、かなり無理をしたところにあることがあります。

外から見ると、明らかに休んだほうがいい状態でも、中にいると分かりません。これは意志の弱さでも、鈍感さでもありません。人間はそういうふうにできています。


## 職場の外の人に話す、という選択

私たちのところに来られる医療従事者の方は、みなさん「まだ大丈夫だと思うんですけど」とおっしゃいます。

解決策が要るわけではないことも多いです。ただ、自分が何にどれだけ疲れているのかを、誰かに向かって言葉にする。それだけで、自分の状態が見えるようになることがあります。

職場の外の人間だから、噂になりません。評価もしません。翌日の勤務にも影響しません。

こころのかかりつけには、医療現場を知っている臨床心理士がおります。説明しなくても通じることが多いので、一から話す負担がありません。

いま限界にいる方も、そうでない方も、一度お話しになってみてください。

代表 橋本真咲

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